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マネー 大量退職時代の老後資金運用について

最近は、団塊世代の大量退職時代を反映して、多くの方に老後資金の資産運用について相談を受けます。年金生活者あるいは高齢者の運用上の条件として、運用に失敗した場合に、これを働いて回復するといったことが困難であること老後資金の一番のポイントです。つまり、現在の財産と年金等による将来の収入が限られている中で、将来の不確実性に備えつつ、できればなるべく多くの運用収益を獲得したいということがテーマになります。

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老後資金の資産運用。そのポイントとは?

高齢年金生活者には本人或いは家族の突然の病気や天災などのリスクを除くと、
(1)この10年間のようにデフレ時に運用が思った通りにならないリスクと、
(2)インフレなどによる生計費の上昇のリスク、
の大まかに二つのリスクがあります。

基本的に事態が不利な方向に動いた場合でも、生活を破綻させずに継続可能な程度にリスクをコントロールしなければなりません。もちろん、生活水準をどのように設定するか、或いは生活上の工夫でどれだけ支出を節約できるかという問題も重要であり、こうした要素も織り込んだ上で運用計画を立てなければなりません。もちろん、リスクを出来るだけ排除してそれで何とかやっていけるといった運用計画と生活水準の組み合わせを選択するやり方もありますが、 病気や災害で生計費の不測の上昇の可能性もありますし、使えるお金に余裕があればそれに越したことはないので、 対処可能なリスクの範囲で「お金に稼いで貰う」ということを積極的に考えてもいいと思います。

詳細まで考えるときりがありませんが、たとえば、現在夫婦とも70歳で年金の受け取りが月に25万円、当面の努力でギリギリの生活が月に30万円、35万円から40万円使えるとある程度余裕のある生活が可能だという老夫婦がいて(子供のことは考えなくてもいいとします)、資産が3000万円ある場合、例えば毎月35万円使っていくと25年で蓄えが尽きてしまいます。

夫婦の余命が25年と考えると

資産3000万円÷(12ヶ月×25年)=月々10万円

現代の長寿社会では夫婦共に90歳を超えて生きる可能性があり、このプランでは95歳で資産が尽きてしまい不安でしょう。

このケースでは例えばまず生きることは無いだろう(この見解には個人差がありますが)と思う年齢を例えば110歳と設定して、70歳から40年かけて資産を取り崩すと考えると十分に保守的でしょう。これは年間75万円、一月当たり6万2千5百円の取り崩しが可能ということになります。月々の年金の受け取りが25万円ですから6万2千5百円を加算すると31万2千5百円の生活資金になります。

夫婦の余命が45年と考えると

資産3000万円÷(12ヶ月×40年)=月々6万2500円

これはギリギリの生活(月々30万円)から見ると年間15万円(月々1万2500円×12ヶ月)の余裕があります。仮にここでこの老夫婦のどちらかまた両方が当面、月に10万円、年間120万円ほど稼ぐことが出来ればどうなるでしょうか。向こう一年の余裕の合計は135万円(120万円+15万円)となります。つまり、言い換えると、最悪の場合135万円に運用の損失が納まるなら、1年間の稼ぎ(120万円)と取り崩してもいい余裕金(15万円)の範囲で翌年の状態を今年と同程度の余裕から始めることが出来ます。

働くことにより年間の資産運用の余裕資金が増えます。

月々10万円のパート×12ヶ月+上記の余裕資金15万円=135万円

「最悪で135万円の損」ということは仮にリスク資産が最悪で年間3割の損失になると見込むなら、450万円までリスク資産(運用資産)を持っても大丈夫という計算になります。

リスク資産をどこまで持てるか?

135万円÷0.3=450万円

以下、たとえば1年後には、資産額をあらためて今度は39年で割ったものを取り崩し可能額に設定し、2年後には38年、さらに最低必要な生計費を見直し、健康に自信があれば念のためもっと大きな数字に改定する、といった調子で条件の変化を織り込んでいけばいいでしょう。「余裕の範囲内でのリスク資産投資」と「1年ごとの条件の見直し」が最低限必要なポイントです。



情報提供
名古屋商科大学(ライフプランニング)非常勤講師
三重中京大学FP非常勤講師 日本ファイナンシャル・プランナーズ協会公認CFP(国際資格FP)
元郵便局の「三重暮らしの相談員」
三重ライフデザインセンター:石川 謙二
E-mail:mie-life-designcenter@ztv.ne.jp
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