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マネー 個人型の確定拠出年金について
 確定拠出年金は、従来の確定給付の企業年金が企業にとって大きな負担になった経緯もあって、企業が導入する企業型を中心に普及が進んでいます。しかし、一般のサラリーマンであっても、厚生年金に加えて企業が年金を用意している会社に勤めているのでなければ、個人型の確定拠出年金に加入することが出来ることは案外知られていません。

そこで!今回は、「個人型の確定拠出年金」についてご紹介します!
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個人型の確定拠出年金とは?

 個人型の確定拠出年金は、大きく分けて、自営業者向けのものと、厚生年金以外に独自の企業年金のないサラリーマン向けのものの二種類があります。なお、公務員は、国家公務員共済、地方公務員共済といった共済年金に加入していますが、これらの共済年金の中には、企業年金の「三階部分」に相当する上乗せ部分が含まれているので、個人型確定拠出年金の加入資格はありません。また、専業主婦も加入することができません。

  各種の年金制度に、加入資格があったり、なかったり、また、掛け金の限度額が異なったりすることの大きな背景は、年金が、その掛け金について税制上所得から控除される税制上のメリットを持っているため、職種や加入する制度によって、個人が受ける税制上のメリットがなるべく公平になるように考えられている、と理解すると違いが覚えやすいでしょう。

  たとえば、次に述べる、自営業者用の個人型確定拠出年金の方が、上乗せ部分の企業年金がないサラリーマンが加入可能な個人型確定拠出年金よりも、掛け金の上限が大幅に大きいことは、自営業者の場合には、サラリーマンが加入している厚生年金に加入していないので、この分の税制上のメリットを受けていないことが、背景にあると考えられます。

(1)自営業者と企業年金のない会社員の加入資格

個人型の確定拠出年金には、自営業者用と、企業年金のない会社に勤めるサラリーマン用の二種類があります。
それぞれの加入資格は以下の通りです。

自営業者
(1) 年齢が60歳未満。
(2) 国民年金の第一号被保険者で、国民年金を支払っていること。

企業年金のない会社に勤める会社員
(1) 年齢が60歳未満。
(2) 厚生年金の基礎年金部分が支払われていること。
(基礎年金、すなわち国民年金の保険料は、サラリーマンの場合、厚生年金を通じて徴収されています)
(3) 会社が厚生年金以外の企業年金制度を持っていないこと。
(たとえば厚生年金基金には厚生年金に追加する上乗せの通称「三階部分」がありますし、会社が確定拠出年金制度を持っている場合も加入資格がありません)

 また、メリット/デメリットを考える上で、重要な要素となる、掛け金の上限は、自営業者が月額6万8千円(年額81万6千円)、会社員の場合は月額1万8千円(年額21万6千円)です。
  加入するには、金融機関や郵便局などが取扱窓口になりますが、個人型の確定拠出年金を取り扱う「運営管理機関」を選択し、申込書類を取り寄せて、手続きを行います。サラリーマンの場合は、会社に申し出ると、給与天引きにすることも可能です。

(2)メリット/デメリットの考え方

 個人型の確定拠出年金の主なメリットは、多くの人にとって、税制上のメリットでしょう。まず、毎月支払う掛け金は、全額所得控除の対象になります。詳しくは、所得税・住民税などの税率や、確定拠出年金の掛け金との関係で計算しなければなりませんが、定期的な収入のあるほとんどの人の場合、運営管理機関の徴収する手数料(年額3千円程度のことが多い)よりも、所得控除による節税のメリットの方が大きいでしょう。

  また、通常の年金と同様に、運用期間中の運用益に対しても非課税扱いとなることもメリットの一つです。加えて、受け取り時には、年金として受け取る場合は公的年金等控除がありますし、一時金として受け取る場合は退職所得控除の適用対象になります。

  もちろん、所得や、したがって長期的な働き方の計画によって、損得判断は異なりますが、特に、自営業者の場合には、掛け金の上限枠が大きいので、確定拠出年金を使わないことは、もったいない場合が多いかも知れません。また、独自の企業年金のないサラリーマンの場合も、相対的に少額であるとはいえ、確定拠出年金を使うことのメリットがあると判断できるケースが少なくないのではないでしょうか。

  個人型確定拠出年金のデメリットとして考慮すべき要素も幾つかあります。まず、運用資産を原則として60歳まで引き出すことができないことのキャッシュ・フロー上の制約です。せっかく確定拠出年金でお金を運用しても、たとえば、生活費が不足して、借り入れを行ったりするようでは、損の方が大きくなってしまいます。

  また、運営管理機関によって異なりますが、加入手数料や年間の管理費のコストもあります。加えて、運営管理機関によって、運用商品のラインナップは異なりますが、加入した運営管理機関の運用商品に運用対象が限定されることもデメリットでしょう。

  なお、運営管理機関が用意する運用商品の運用手数料は、一般に金融機関の店頭で売られている投資信託などと同等のこともありますし、ある程度安くなっているケースもあります。同じような資産で運用するファンドに投資する場合には、一般に売られている運用商品よりも、確定拠出年金の中に適当な選択肢があれば、これを使った方が、全体として得になることがある点は覚えておくといいでしょう。

(3)運営管理機関の選び方と運用の考え方

 前述の通り、運営管理機関によって、運用商品の品揃えが異なるので、まずは、この点が重要です。自分が運用したい内容(主に資産の種類)のもので、運用の内容が明確で、運用商品のコスト(信託報酬など)の安いものがあるかどうかを中心に、商品ラインアップを検討しましょう。

  日頃使っていたり、たまたま近所にあったりする金融機関が扱う運営管理機関に直ちに決めてしまいたくなるかも知れませんが、たとえば、ネット証券などでも確定拠出年金を取り扱うような場合もあるので、幾つかの運営管理機関の条件を比較して選ぶといいでしょう。

  運用商品の選択を自分自身で行わなければならないことが確定拠出年金の大きな特徴ですが、主なポイントは、(1)全体の運用資産の中の一部であることを意識して運用対象を決める、(2)運用益非課税のメリットを考えて有利な資産を選ぶ、(3)コストが小さくて、(4)内容がはっきり分かるものを選ぶ、といった点であり、これは、通常の確定拠出年金の運用の考え方と変わりませんが、運営管理機関によっては、たとえばバランス型の商品を中心に揃えるなど、こうした趣旨に沿った運用がやりにくいケースがあるので、注意して下さい。


情報提供
元郵便局の「三重暮らしの相談員」
現在日本ファイナンシャル・プランナーズ協会公認CFP(国際資格ファイナンシャル・プランナー)
三重ライフデザインセンター:石川 謙二
E-mail:mie-life-designcenter@ztv.ne.jp
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